クーラー・トイレまで!?小さな車体に詰め込まれた防災力!トイファクトリーが提案する軽自動車ベースの「くるまシェルター」
2025年6月、トイファクトリーが、スズキ・エブリイをベースとした新しい災害対応モビリティ「MARU MOBI Lite(マルモビライト)」を発表した。岐阜県可児市との共同開発で生まれたこの一台は、災害支援の現場で「本当に欲しかった機能」をかたちにした、これからの時代の「くるまシェルター」だ。
あのマルモビに「軽」タイプが登場!被災地の声から生まれた実用モデル
キャンピングカー開発のノウハウを防災に転用した「MARU MOBI(マルモビ)」は、トヨタ・ハイエースをベースとする多機能モビリティとして、全国の自治体で導入が進んでいる。その新モデル「マルモビライト」は、よりコンパクトな軽バン(スズキ・エブリイ)をベースにしたモデルで、女性職員でも運転しやすく、狭い被災地の現場でも機動力を発揮する。
2025年6月27日、トイファクトリー本社にてされたマルモビライト記者発表会(右:可児市 冨田市長、左:トイファクトリー 藤井社長)
開発のきっかけは、能登半島地震の支援現場に赴いた可児市の職員たちの声だ。
「被災された方が夜泣きする乳幼児と過ごす場所がなく、周囲に気を遣っていた」
「着替えや休憩ができるプライベート空間がほぼなかった」
「汲み取りが間に合わず簡易トイレが使えなくなり、環境が非常に不衛生」
こうした声を反映して、トイファクトリーと可児市の共同プロジェクトがスタートした。
マルモビ開発に携わったトイファクトリーのスタッフと、岐阜県可児市職員たち(2025年6月27日、トイファクトリー本社にて)
普段は軽バン、有事には畳空間に早変わり!?
マルモビライトのベース車には、ハイエースベースだったこれまでのマルモビよりも小さく、機動力のあるスズキ・エブリイが採用された。通常時は4人乗りの軽バンとして使えるが、有事にはフルフラットに展開可能。
フラットにすると床面には奥行き1750×幅1200mmのスペースが生まれ、大人1人+子ども1人が横になれる畳空間に早変わりする。
この畳マットには高品質な特殊ウレタンを芯材に採用し、防汚・撥水加工された和紙素材を使用。夏はさらっと、冬は冷えにくい。しかも通常の畳より重量が約1/3と軽くて扱いやすいので、誰でも簡単に設置できる。
畳や床板などのシェルター装備一式は車内の上部に収納可能な設計で、4人乗車時にもそのまま運搬できる点もポイントだ。
畳が頭上収納部分に収められている。畳材の軽量さのおかげで女性でも展開可能なのがよく考えられている
クーラー・家具・トイレまで!?小さな車体に詰め込まれた防災力
「軽だから災害時には狭くて不便では?」という心配は無用だ。マルモビライトには快適性と実用性を両立した装備が満載だ。
ポータブルエアコンは冷房-8℃/暖房+9℃のパワフル性能を持つEcoFlow製を採用
窓を開けて取り付ける高断熱ダクト+密閉パーツのおかけで、車内を閉め切っても快適にクーラーを稼働できるバックドア部分にカーテン&タープキットを設置タープを降ろせば、立って着替えができる広さのプライバシー空間を作れる サイドオーニングも取り付け。雨や日差しを遮る空間を簡単に創出できるトイファクトリー車に多数搭載され、信頼性が高いシャープ製ソーラーパネルを採用
室内はフルフラットだけでなく、浮かせた構造のレール式家具を搭載させた。助手席背面テーブルや、脱着式のカウンターテーブルなどを使えば、現場のデスクワークや休憩にも便利だ。
左右に立ち上がった壁に走っているレールを使って……コンパクトなサイドテーブルをひっかければ物置の完成左右のレールにカウンターを渡せば、職員のデスクワークにも使える助手席の背面にサイドテーブルが設置できる運転席の背もたれを前に倒して、座椅子のようにくつろぐことも
ポータブルトイレで「トイレカー」にも!緊急時の衛生問題に対応
避難所でなにより深刻なのがトイレ問題。トイファクトリーのマルモビも、これまでトイレカーとして活躍した実績があるが、マルモビライトにも、カーテンなどで空間を仕切って、ポータブルトイレを設置できる。
ここでもサイドテーブルはトイレットペーパーや物置に活躍しそう。トイファクトリーはヨーロッパのポータブルトイレメーカー「クレサナ社」の日本総代理店でもあるので、ハイエースの「マルモビ」にはクレサナのトイレが設置されていた
クレサナ社などの「水を使わないトイレシステム」は、フィルムで排泄物を密封処理する独自の技術により、衛生的でにおいも気にならず、使い終わったあとの処理も簡単だ。
災害時に限らず、医療機関や介護施設、企業やマンションなどでも「もしものときにも業務や暮らしを止めない」ための備えとして注目が高まっている。水道や下水が止まった状況でも清潔に使えるこの仕組みは、これからの危機管理の新しいスタンダードになりそうだ。
穴あけ不要!スピード後架装で緊急時も安心
マルモビライトは、車体に穴を空けず、既存のネジ穴を利用して家具を固定。だから納車済みの車両にもスピード後架装が可能で、有事の際にも迅速に導入できる。現在はスズキ・エブリイのみ対応だが、今後は他車種への展開も視野に入れている。
購入だけでなく、各自治体が保有する軽バンを持ち込んでの後架装にも対応予定だ。
「防災」×「車中泊」の新常識。トイファクトリーの挑戦は続く
キャンピングカーの技術を応用し、防災の現場を支える「走るくるまシェルター」。トイファクトリーは、災害支援や地方創生といった社会課題に向き合う新事業部「TFME」を発足し、今後もBtoB・BtoG領域でのモビリティ開発に力を入れていく。
キャンピングカー=趣味の乗り物という印象を変える、暮らしのセーフティネットとしての一台。それがマルモビライトだ。
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