東北で1番キャンピングカーを売った男が教える「後悔しないキャンピングカー選びの5つのルール」
カタログやスペックだけでは見えてこない「本当に満足できる1台」をどう見極めるか。現場で数多くのユーザーと向き合ってきたトップセールスマン・小島孝弘氏が語る、ユーザーに心から納得できるキャンピングカーを購入してもらうためのルールとは?
キャンピングカーとの出会いが運命を変えた
デルタリンク宮城ポイント店長の小島孝弘さんは、2024年“デルタリンクで一番キャンピングカーを売った男”だ。
小島氏「ジャパンキャンピングカーショー2025のLACグループ(※)懇親会で、MVP(トップセールスマン)として表彰されました。昨年1年間に販売したキャンピングカーの台数は、59台(月平均5台ペース)。1人あたりの営業利益も、LACグループ全体でデルタリンク宮城ポイントがトップです」
デルタリンク直営店舗全体のトップセールスマンとして贈られたトロフィー
※LACグループホールディングス:デルタリンク、キャンピングカーランド、アネックス、ダイレクトカーズなど複数のキャンピングカーメーカーによる持株会社。グループ全体の販売拠点数は16(2025年9月現在)
デルタリンク宮城ポイント店長の小島孝弘さん
モーターホームやキャンピングトレーラー、国産キャブコンやバンコンなどがズラリと並ぶ展示場。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのデルタリンク宮城ポイントだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかったという。
小島氏が初めてキャンピングカーに触れたのは、中古車販売店に勤務していた時。
小島氏「ここでキャンピングカーと運命的に出会ってしまいまして。当時勤めていた中古車販売店の社長が『キャンピングカーを販売したい』と言い出して、バンテックのジルなど2車種を販売することになりました。休日にクルマを使っていいと言われて生まれて初めてキャンピングカーに乗ったら、目からうろこ! 家族が1つの部屋で生活をするキャンピングカーライフは、笑顔にあふれていました。『家族が家族でいられる乗り物』だと感動して、もっと深くキャンピングカーに携わる仕事をしたいと思うようになりました」
送り込まれた先は、まさかの不採算店舗
その後、別のキャンピングカービルダーで業販担当として6年勤務した後、デルタリンクに転職。入社半年後に社長の意を受けて送り込まれたのが、デルタリンク宮城ポイントだった。当時、宮城店は直営店で唯一の不採算店舗。スタッフは小島氏を含めてわずか3人。閉める一歩手前の状態だったという。
小島氏 「ほかの店舗は売れているのに宮城だけ売れないのはおかしいと、いつも社内で言っていました(笑)。なので、責任は重大!とにかく、マンパワーも足りず、今までできていなかった『当たり前のこと』をやるところからスタートしました。年賀状やイベント告知、車検のお知らせなどの顧客サービスに始まり、東北全体を盛り上げるためにイベント会社にも積極的に意見を言うようにしました。中古車ばかりだった展示車も、ラインナップを一新。LACグループの車両以外にレガードや他社のバンコンなども取り扱って、価格や使い方など、お客さんの幅広いニーズに対応できる体制を整えていきました」
そうした努力のかいあってリピーターも増え、3年目から業績が黒字に転換。デルタリンク直営店全体でナンバーワンセールスを記録するまでに上り詰め、前述したように小島氏は2024年に「MVPトップセールスマン」に!
LACグループ内でのトップセールスだけでなく、JRVA安心パックの加盟者数でも法人部門1位、個人成績3位の好成績を残している
スタッフの数は現在は1人増え、小島氏を含めて4人に。それでも少数精鋭店舗のため、店長としての業務はもちろん、接客、店舗管理、経理、洗車、クレーム対応、お茶出しまで多岐にわたる。
デルタリンク宮城ポイントのスタッフと、顧客であるご夫妻で記念撮影。納車後も気軽に遊びに行けて、メンテナンスやカスタムについても親身に相談に乗ってくれるのが小島氏の魅力のひとつ
キャンピングカーで購入で後悔させない「トップセールス流5つのルール」
そんな小島氏が店舗を黒字経営に導いた、トップセールスマン流の営業スタイル5つの鉄則がこれだ。
1. うそをつかない – メリットもデメリットも正直に
2. 買った後のお金のことも踏み込んで説明 – 維持費も含めてしっかりアドバイス
3. どう使うか?を明確に – ニーズを確実に把握する
4. 納車の説明は最低2時間 – 後々のトラブルががくんと減る!
5. SNSはマスト! – トラブル時に画像や動画で状態を共有すれば、すぐに動ける
ルール1:うそをつかない
小島氏「まず、お客さんに「うそをつかない」こと。商品を売るためだけに必死の営業マンも多いですが、キャンピングカーは特殊なクルマなので、メリットだけ並べて無理に売っても絶対によい結果特に輸入車は購入後にトラブルが発生する可能性がありますから、「ノーメンテ・ノートラブルで10万km乗れるトヨタの乗用車とは違いますよ」と正直に話します。
国産のバンコンやキャブコンも、貨物車ベースなら乗り心地は悪いし、重量がある分燃費も悪いし、タイヤの負担が大きいので普通車以上に点検やメンテナンスも重要になる。そういう話を聞いて嫌だなと思う人は、そのクルマを選ばなければいいわけです。初めて店舗に来て「これ買います」というお客さんには、「もうちょっと考えたほうがいいんじゃないですか?」とこちらからストップをかけることもあるくらい(笑)」
メリットだけではなくデメリットも正直に伝え、キャンピングカーの特性をしっかり理解してから購入してもらう。その営業スタイルは、納車後に後悔しないように「お客さんを守る」ことでもある。
ルール2:買った後のお金のことも踏み込んで説明
小島氏「キャンピングカーは購入後もお金がかかり、資金がギリギリだと維持できないこともあります。売って終わり、買って終わり、ではないんです。単なる車両販売員ではなく、キャンピングカーライフのアドバイザーとして、お客さんに長く乗って楽しんでいただくために、収入面まで踏み込んでアドバイスをすることもあります」
ルール3:どう使うか?を明確に
小島氏「お客さんと徹底的に話をすることも、こだわりの1つです。キャンピングカーの使い方は、人によってさまざま。使用する人数や使い方によって、その人に合うモデルは変わります。まずは、お客さんと話をして、使い方やライフスタイル、その人の性格まで把握したうえで最適なキャンピングカーを提案する。人によって異なるニーズにピッタリ合った車両を提案するには、事前のヒアリングがもっとも重要なんです」
なるほど、ここまでのルールをわれら購入側の視点に読み替えると、「デメリットも聞いて納得してから買う」「買った後の資金プランを考えてから決断する」「使い方を具体的にイメージする」ことが失敗しないキャンピングカー選びの第一歩となりそうだ。
そして「購入を「やめた方がいい」と提案できる誠実さがあるか」「無理に「ローンで買いましょう」と勧めるのではなく、ユーザーの家計を考えて提案してくれるか」「どう使いたいか?を丁寧に聞き出し、ライフスタイルに合わせた提案をしてくれるか」というのが担当者選びのひとつの基準となりそうだ。
小島氏流の後悔させないルールはまだまだ続く。
ルール4:納車の説明は最低2時間
小島氏「後々のトラブルを避けるためにも、納車時は2時間かけてじっくり説明します。説明内容は、メインスイッチを起点にひととおりの使い方と壊さないための注意点など。最長では、6時間かかったこともありますよ(笑)でもここは譲れない。キャンピングカーの作りって独特ですからね」
ルール5:SNSはマスト!
小島氏「私はLINEを使っていますが、車両トラブル時のために、SNSでつながっておくのは基本ですね。写真や動画で車両の状態を送ってもらえるので、電話よりもわかりやすくスピーディに対応できます。やり取りの内容をお互いに確認できて、トラブルを避けられるのも利点です」
どうだろうか。キャンピングカーは購入後も店舗との付き合いが続くことがよくわかる。それならば一層、クルマ同様にセールスマンとの相性も大切になりそうだ。
デルタリンクのキャンピングカー「ダーウィンQ3」にお乗りの小島氏のお客様、亀山さんご夫妻。「購入にあたって小島さんには『納車を早くして』『下取車を高く買って』など無理をかなり言いましたが(笑)とにかく対応が早い!そして納車後の追加カスタムなども真摯に相談に乗ってくれて、できないことはダメとハッキリ言ってくれるのがいいですね」
トップセールスが教える、キャンピングカー選びの「極意」
ここで、数多くのユーザーのキャンピングカー選びを手伝ってきた小島氏に、キャンピングカー選びの極意について話を聞いてみた。
キャンピングカーの第一印象はとても大切!
小島氏「私がキャンピングカー選びで一番大切だと思うのは、ファーストインプレッションです。キャンピングカーはクルマと家の要素が融合した乗り物ですから、自分が好きなデザイン、心地よく過ごせる空間、ワクワクできる存在であることがとても重要です。サブバッテリーをはじめとする装備は後からでも追加・変更できますし、現在はポータブル電源を使って車内の電源を手軽に拡張することもできます。しかし、室内のレイアウトや家具、デザインは簡単には変えられません。だからこそ、デザインやレイアウトを含めたクルマ全体の第一印象が重要なんです。
ダーウィンQ3バンタスティックエディションの室内。質感の高い内装にビビっと来たなら、その気持ちは忘れないほうがいい
ある車両にひと目ぼれした人が、その後ほかのキャンピングカーを何台も見て、結局最初に選んだクルマに戻ってくることも多いです。自分が最初に「イイ!」と思った感覚は、それだけ大切ということですね。クルマもそうですが、人についてもファーストインプレッションは重要です。購入したお店のスタッフとは、メンテナンスや修理、カスタムなどで長いつき合いになりますから、スタッフの対応に疑問を感じたり、嫌だなぁと思ったりした場合、そのお店で購入するべきかよく考えたほうがいいと思います」
熟慮を勧められるかと思いきや、ファーストインプレッションの大切さを語ってくれた。確かに、キャンピングカーは決して安い買い物ではないし、生活必需品というよりは趣味の道具だ。だからこそ、実用性だけでなく「ときめき」を無視してはいけない。ユーザーの直感やワクワク感を尊重しつつ、現実的な提案もしてくれる――そんなスタッフこそ、信頼できるパートナーといえるだろう。
購入を悩んでいる人に、プロからのアドバイス
小島氏「キャンピングカーは、非日常を楽しめる乗り物です。家ではなくクルマなので不便を感じることもありますが、不便自体を非日常として楽しんだり、快適に過ごせるように工夫をするのもだいご味の1つです。仕事が忙しい現役世代は自分の時間が作れることでリフレッシュできるし、子育て世代は子供たちとのきずなを深めることができる。セカンドライフ世代は、自由な時間をより充実したものにできます。現在はYouTubeやSNSに情報があふれていますが、それだけをうのみにせずお店やイベントに足を運んでスタッフと話をして、自分の目と耳でベストな1台を見つけ出してください」
小島孝弘氏の経歴
花き・植木小売業に就職
初めての就職先は、キャンピングカーやクルマとは無縁のフラワー業界。結婚式やパーティ、イベントなどのフラワー装飾や庭作りなどを行なっていた。11年の勤務を経て、いよいよクルマ業界に転職することに。
中古車販売店に勤務
キャンピングカーに乗っていた社長の薦めで、中古車以外にキャンピングカーの販売をすることに。初めてキャンピングカーに触れ、その魅力にぞっこん。ここでの経験が、現在の土台になった。
キャンピングカー業界へ
オートキャンパー本誌に求人広告が出ていた某キャンピングカーメーカーに転職。業販担当として全国のお店をまわり、イベントでは各ブースにあいさつまわり。約6年間キャンピングカーにどっぷり浸かった生活を送り、全国の業界関係者と太いパイプを作った。
デルタリンクに転職
国内外のキャンピングカーを取り扱うデルタリンクに転職後、キャンピングカーランドのファンルーチェ事業部に出向。キャブコンのイグアスを担当した。半年ほどの短期間だったが、ファンルーチェユーザーの小規模オフ会にも顔を出すなど積極的に活動した。
宮城店へ異動
不採算店舗の宮城店に異動。「当たり前のことをやる」を合言葉に、社内業務やキャンピングカーイベントでらつ腕を振るう。3年目に黒字転換して店舗を立て直し、9年目の現在デルタリンクのMVPトップセールスマンに!