新型ハイエース登場!?ジャパンモビリティショー2025の会場から考える、キャンピングカー文化の発展とこれから
東京モーターショーから名前を変えて、今回で2回目の開催となる「ジャパンモビリティショー2025」が、東京ビッグサイトにて、2025年10月31日(金)〜11月9日(日)の10日間に渡り開催される。もちろん、国内外の主要なメーカーによる新型車やコンセプトカーの発表は”モーターショー”から変わらず、既に世間を賑わせている事だろう。”モーターショー”から”モビリティショー”へ、変わったのは何も名称だけではなく、ただ各社自慢のニューモデルを披露する場から、自動車ひいては”乗り物”を基軸とした、様々なカルチャー・ライフスタイルに寄り添い、”我々と乗り物の未来”について深く考える場へと変貌を遂げている。
…そこで、そんな日本の車社会をレジャー方面に牽引してきた”キャンピングカー”にも白羽の矢が立ったのが、前回(2023年度)のモビリティショーであったが、もちろん今年も「日本に、キャンピングカーというカルチャーを。」を標語に掲げるJRVAプレゼンツで、専用ホールが設けられており、当然そちらの様子を中心にレポートをお届けする。
また、今年のモビリティショーのメインプログラムは「Tokyo Future Tour 2035」と銘打ち、自動車産業以外からも、航空分野やロボット工学、AI技術などに代表した、様々な産業の企業・団体との連携の中から見えてきた、近すぎず、遠すぎもしない”ちょっと先の未来”である10年後の景色や生活を、より現実味を感じつつ体感できる展示となっている。そのワンコーナーに「FUTURE OUT-DOOR LIFE」という、乗り物とアウトドアの10年後の未来が体感できるブースが設けられていたのも、オートキャンパー的には見逃せない。
前置きが長くなったが、オートキャンパーwebでは、今回のジャパンモビリティショー2025を、新車/コンセプトモデル・JRVAブース・未来のアウトドア、この3つの切り口でお届けしようと思う。
とにかく注目は新型ハイエースのコンセプトモデル!
まずはモビリティショーの醍醐味といってもいい、新車、コンセプトモデル情報からお伝えしよう。プレスデイ初日の朝イチから大いに世間をザワつかせていたのがトヨタグループのプレスカンファレンスだ。中でもオートキャンパー読者の諸兄にとっても、絶対見逃すことが出来ないのが新型ハイエースのコンセプトモデルだろう。もちろん、あくまでもコンセプトモデルであって、まだまだ市場に投入されるとか、されないとかの段階ではないという前置詞が付くものの、やはりその動向には深く注目せざるを得ない。今回は、いわゆるハイルーフのロングモデルと通常サイズの2種類を展開していたが、いずれもシングルシーターで潔く”道具”としてのハイエースに振り切っていた点が気になった。また、片側ピラーレスによる大開口はキャンピングベースとしても色々と妄想が膨らむ所で、個人的にはぜひ今後の開発にも継続してもらいたいエッセンスである。
ハイエースの原点に返り、今回はツールとしての展示に振り切ったとのこと現場の担当員いわく、キャンピングカー需要に供給が足りていない事も理解しており、車中泊仕様も想定した作り込みをしてきたという。一例に挙げてくれたのが、リアのタイヤハウス。左右でツーバイ材がぴったり架けられるサイズになっているまたフロアやサイドパネル、ルーフに無数のボルト穴が設えてあり、レイアウトの自由度を高めている
また「IMV origin」のインパクトあるスタイルにも魅かれた。まるで果樹園の薬剤散布車?みたいな大胆すぎるモデルだが、これは深い理由が存在した。アフリカをはじめとする新興国の未来を見据えたモデルということで、あくまで”土台”だけを提供し、上部構造は現地のニーズによって自由にカスタマイズ可能とした。また、なるべく”汎用部品”で構成することで、そもそもディーラー網が存在せず、自力で直すしかないような土地での生存性を高めている。売った後のサポートが手厚いのがトヨタの”売り”だと思っていたが、まさかそのサポートが行き届かない現実にまでメスを入れるとは恐れ入った。サイズ的には軽トラックで、何もなさすぎるというという意味ではキャンピングカービルダーの個性をぶつけられる器としてワクワクさせられてしまった。
▲展示車両は右ハンドル仕様になっているが、バンパー右部分からハンドルやフットペダル、灯火類などが接続されているのが分かるだろうか?このユニットは反対側(バンパー左)のオレンジのカバー部分に接続し、左ハンドル仕様に、さらにはセンターシートにすることも可能な設計だ。
余談だが、トヨタブースでは「IMV origin」の斬新すぎるレイアウトを体感できるプラモデル組み立てコーナーも設けられており、誰でも無料で記念にお持ち帰りOK
三菱デリカD:5もビッグマイナーチェンジが行われた。先代は都会的な洗練されたイメージを追求したが、今回のビッグマイナーチェンジにより、本来の路線に戻った感じ。よりアウトドアギア感を想定したスタイルに路線変更!四輪制御技術「S-AWC」を搭載し、NORMAL/ECO/GRAVEL/SNOWの4つのドライブモードを設定したのもトピック
東8ホールで、改めてキャンピングカー文化の発展を感じる
東京キャンピングカーショーの会場としても、我々に馴染み深い”東8ホール”にはキャンピングカーゾーンが特設されている。バンテック社の「アストラーレGX4」は、いよいよ量産に向け、実際に富士ヶ嶺オフロードでのテスト走行を終え、その力強い走りを収めた映像もブースで確認することができる。またホール中央には、かつてヨコハマ・モーターセールスが手がけた1994年製いすゞ・ロデオキャンピングカーが展示されていた。80年代後半から90年代にかけての第2次キャンピングカーブームを大いに支え、1090台が量産された中の964番目の車両だ。全国のいすゞディーラーでも取り扱われ、キャンピングカーが市民権を得るひとつのきっかけともなったヒストリーがある。元々ナッツ RVに下取りで入ってきた個体だそうで、今回のモビリティショーに向け、そんな歴史の証人を生き返らせることとなり、同社にて、新車同様の輝きを取り戻した。
▲バンテックはアストラーレブランドから「GX4」と、同社のロングセラーモデル「ジル」を出展。ただ内外装がピカピカになったわけではない。室内に設えられた家具類は30年という時を経て、まるでアンティーク家具のような、厳かとも言えるような存在感を放っていた
また、そんなナッツRVブースは会場内でもひと際目立っていた。というのも、クレア・ボーダーバンクス・ジョリビーの3台のスケルトンモデルが勢ぞろいしており、遠目に見ても目立つし、思わず近くでディテールを確認をしたくなるといった具合で引き寄せられる展示方法なのだ。
トイファクトリーからは、ディズニー公式キャンピングカーシリーズ5作目、新モデルが発表となった。今回は同じディズニーでも、趣向を少し変えて「スターウォーズ」の世界観を表現した限定5台の「ダヴィンチ6.0」が発売される。こちらについての詳細はオートキャンパーのyoutubeにて独占取材に成功しているので、近日中に公開予定!
キャンピングカーだからこそ、EVの波に乗れる?
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そして最後に10年後のキャンピングカー業界を考えてみたいと思う。私が「FUTURE OUT-DOOR LIFE」エリアで出会ったのは、Carstayが手がける日本初のEVキャンピングカー「moonn.(ムーン)T-01」だ。こちらの車両はHWE社の「ELEMO-L」というEVバンをベースにしたキャンパーで価格は999万円(税込)。航続距離は270kmで、最高速度は90km/h、急速充電(30〜80%)30分というスペックを誇る。走行用のメインバッテリーとは別で車内アクセサリー用に24V200Ahのサブバッテリーを組んでおり、外部電源の他に走行用バッテリーから電力を賄うこともできるのが大きな特徴だ。正直な所、やはり家具のレベルなどは既存のキャンピングカービルダーに大きなアドバンテージがあると言わざるを得ない。しかし、それを逆手にシンプルな発想でキャンピングカー作りに取り組む姿勢は面白いと感じた。
Carstayが提案する「SAny.(サニー) KIT」は、ベッドはもちろんキッチン・シンク周りから電源関連までをユニット化して販売することで「どんな車両でもキャンピングカーにすることができます!」と代表の宮下さんは語る。実際に簡単な合板の組み合わせで構成されているので、数時間もあれば組み立てることができるという。昨今のキャンピングカー事情には電源関連の話がどうしても付きまとってくる。エンジンやドライブシャフトなどがない分、自由な発想でレイアウトできるのがEVの利点でもある。これまでではあり得なかった新しいキャンピングカーというのは、こういう新興EVメーカーから生まれるような気もしているし、もしかしたら電力へのニーズがある分、EV自体の普及も普通車よりキャンピングカー業界の方が可能性としては高いのかもしれない。
こちらが「SAny. KIT」。すでに発売中のこのEV。消耗品や補修部品等の供給はどうだろうか?……と考えるのは、保守的な日本人ならでは?
オートキャンパー的目線で練り歩いたジャパンモビリティショー2025だったが、直近に発売されそうなプロトタイプのキャンピングカーから、10年後には普及しているかもしれないEVキャンピングカー、そして数年のうちにはデビューしてほしい新型ハイエースに関する動きまで、意外と楽しむことができた。もちろん各社、スポーツカーだったり花形なニューモデルも展示しているのだが、それに負けないくらい注目度が高かったのは、やはりハイエースコンセプトだ。まだまだコンセプトモデルゆえに市場を探り探りな様子ではあったが、逆に言えばこのような場に持ってきて、ユーザーの反応を伺っているのもまた事実。であれば、直接会場へ足を運んで、見て感じて、意見してみても良いのではないだろうか。ひとつだけ、間違いなく断言できることは「我々は新型ハイエースの登場を首を長くして待ち望んでいる」ということなのだから。
ハイエースコンセプトのホイールは19インチ。下回りを覗いてみてもつるんとしていて、やっぱりコンセプトモデルなんですよね、まだ…


